人手不足をはじめ、介護業界は現在さまざまな問題を抱えている。だがより身近な問題として挙げられるのは、家族の介護をしなければならなくなった際の金銭的な問題と福祉サービスに関する知識不足だろう。
介護が必要になると、介護施設を利用したり手すりをつけるために家をリフォームしたりと、何かとお金が掛かる。それらは高額な出費になることもあるため、家計への負担が大きく、家族の生活が困窮に陥るケースも少なくない。
それに伴い、要介護者に対する福祉サービスの詳細が知られていない問題がある。要介護者に対する様々な支援制度が整っているが、それらの多くは要介護者の親族が役所の窓口に出向いて申告をしなければ利用できない。要介護認定を受けるだけでは福祉サービスを受けることができないが、サービスの存在そのものを知らないというケースもあるのだ。
従来の介護業界は要介護者へのサポートを重視する一方で家族へのケアは軽視する傾向があった。家族は要介護者では無いというのが主な理由だったが、要介護者と最も多く接するのも家族であることから、心身の疲労は計り知れないものがあるのが実情だ。そのため現在は要介護者の家族も対象に入れたサポートが増えつつある。だがそれもまだ少なく万全とは言えないため、いち早くサポート体制を整えることが介護業界の課題だ。
高齢化社会になった現代の日本において、家族が要介護者となる事態は決して他人事ではない。要介護者への福祉サービスについて詳しい知識を持つことが大切だが、多くの人は介護の素人だ。閉塞した状況を改善させるには介護業界が積極的に介護のあり方や福祉サービスについて喧伝することが重要になるだろう。